onsenkyo-craft-theater2022/phot by Kenichi Okayasu


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二度ト天ニハ

アトリエに鹿の毛皮が裏返しに吊るされ、黒のコンテで最初の線が引かれるのを見た。そのとき鹿の毛皮だったものが鹿の毛皮であることをやめた。面に触れた瞬間、コンテが鉄やチタンやカーボンであることをやめた。物質が意味に従うのを見た。描いている人はほんとうに飯沢康輔さんなのか。迷いのないリズムとスピードは人間の手を介した別の意思なのか。同じ空間にいて、私にはわからない。
飯沢さんは、人々が目が逸らし、拒んで背を向けた内面を描く。だから厳しくて、同時に切実でもある。背中の目は失われた時期やほろびたものをも見ているのかもしれないが決して無とは混じり合わない。内側で完結しない。見るものの視線を強く反射し続ける。向かう強さを失わない。
鹿の皮に描かれた背中の目を、折れた翼の痕跡のようだという人もいた。
二度ト天ニハ戻レナイ
という声を聞いた気がした。

文・絲山秋子
木枠・平井敦
絵・飯沢康輔

 

     KOSUKE IIZAWA WebSite -美術家 飯沢康輔の作品と展覧会のご案内-

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