声を掘り出す。
微かな声をたよりに。
それは至る所から聞えてくる。
気付かなければそれで済む。
それにそんなもの掘り出したからって世界は何も変わらない。
仕組みが変わる訳でもない。
無視していればいいのだ。
それが難しいから声に耳を傾ける。
過去から投げられたボールがまだ着地しないでいるこの合間に
掘り出してしまえ。
空気に触れさせてしまえ。
時間の残酷さに朽ちさせてしまえ。
今も今も今もまるで磨かれる銀玉のようにピカピカに命の先端で
研磨されているのだ。
こんなものは記憶の底に捨ててしまえばいい。

そしてこの手のひらで最後の声は震えている。

                         2010.09



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