記憶を呼び戻す為にこの渚に帰って来た。
乾いた砂を巻き上げ歩みを進めていたが、いつしか水際に足をぬらしていた。
洗われるままに足を差出すのはなんと気持の良い事だろう。
だしぬけに我に帰る可笑しさ。
繰り返す波は、足元の砂をさらい、新たな砂を届けながら、わずかな歴史すらも隠滅しようと謀る。
そのささやかな悪意と優しさ、容赦ない平等、時間の軸が初めて交差する。
未来は過去によって約束され、過去は未来によって選択される。
砂に沈み行く私は、「今、この瞬間」のどちらにも属する術なく。
ゆだねる事なく、拒む事なく。
ここに立ち続けるより他はなくて。
時の渚にて
DeeP'09 時の渚にて